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- 2022.09.24
「貫徹」、TOP8昇格を現実にするため決めた覚悟|駒澤大学ブルータイド 山口純
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2021年にチームが掲げた目標『全勝優勝』を達成して昇格し、今年から戦いの場を1部BIG8に移す専修大学グリーンマシーン。
しかし、1部昇格となれば当然、対戦相手もレベルが高くなり、厳しい戦いが予想される。専修大学グリーンマシーンとしては、まさに今年は正念場の一年と言えるだろう。
そんな今年のチームを引っ張るのが、主将のOL平久景大(たいらく けいた)選手だ。
大学1年の時、既に監督から『お前は4年になったら主将だな』と言われていたという平久選手。彼が牽引する今年の専修大学は、どんな目標と思いを持って秋シーズンに臨むのか。
▼目次
記事・写真:三原 元(みはら はじめ)
「自分が高校でフットボールをやっていた時には、全員が本気でやっていたなと思うんです。勝つためだったらどんな事もしようという空気が部員全員の中にありました。」と話す平久選手は、高校アメフトの強豪、千葉日大一高出身だ。
同校は、平久選手が3年で副将となった年に地区大会優勝、そして全国ベスト8という成績を上げている。そんな彼は高校卒業後に専修大学へと、アメフトをするために進学する。
高校と大学では、同じアメフトでも様々なものが違う。部員数や練習環境といった物理的な事から、雰囲気という精神面まで。
「フットボールのレベルで言えば、もちろん高校より大学の方が高いです。けれど、意識的な部分では、悪い意味でギャップがありました。高校の時にあった空気が、自分が専修大学に進学した時には、あまり感じられなかったんです。だからこそ、その空気を自分が変えられるキッカケになれば、と思って行動していました。」
1年の時からチームの雰囲気を変えようと積極的に行動をしていたという平久選手。監督は「平久は1年の時からズバ抜けている部分があったので。なので、1年の時には『お前は4年になったら主将だな』という事を話していました。発信力というか。1年生ながらリーダーシップ的なものがありましたね。」と語る。
専修大学監督 渡辺 卓史氏
大学1年の時から、すでに将来の主将を監督から期待されていた平久選手だが、彼が主将になる事を決めたのは、ある人の背中を見た事が大きいと話す。
「宮川さんです。彼の背中を見て、主将になろうと決めました。」
平久選手が話す宮川さんとは、2020年度専修大学の主将を務めた宮川翔太(みやがわ しょうた)選手のことだ。
2020年主将 宮川翔太選手(2021年は同チームコーチ)
「宮川さんは誰よりもフットボールが好きで、誰よりも勝ちたいと思って、チームをまとめようと頑張っていました。自分は、そんな宮川さんを間近で見ていて、自分自身がもっとフットボールに本気になろう、と思うようになれました。」
監督曰く、平久選手は大学1年時は主将として期待をしたものの、それからしばらくはチームやアメフトに対する情熱が無くなっていたそうだ。しかし、そんな彼を本気にさせたのが、宮川選手のフットボールへの熱い姿勢だったようだ。
「ただ、そんな宮川さんの代でも、最終戦の東工大戦で勝つことが出来なかった。それだけの人がやってもチームを本気に変える事が出来なかったのを見て、自分は宮川さんの意志を継ぐというか、自分がこのチームを変えられるような取り組みをしたいと思って、主将になろうと決めました。」
宮川選手が成し遂げられなかった思いを継ぐ事を決意し、主将になる事を決めた平久選手。そんな彼に宮川選手はこう言ったそうだ。
「やるべき事をやれば、必ず勝てるチームだから」
宮川選手が言った『やるべき事をやれば』という言葉。2019年に副将、2020年は主将そして2021年に社会人コーチと、どの選手よりもチームに深く関わった同選手の言葉は重い。
専修大学は2021年の昇格戦で勝利し、1部BIG8への昇格が決まった。その時に平久選手はどんな事を思ったのかを聞いた。
「昇格が決まった試合は、内容的にはオフェンスもディフェンスも、思うような実力を出しきれなかったので。なのであの時は昇格の喜び、というよりは『これで昇格をして、本当に大丈夫なのか。』という危機感の方が強かったです。」と、当時から昇格後の事を見据えてチームに危機感を抱いていた平久選手。
実はこの試合後に平久選手は、昨年度主将の石橋銀河(いしばし ぎんが)選手と固い握手を交わし、何か話をしていた。
左:2021年度主将 石橋銀河選手 右:2022年度主将 平久景大選手
「この時に石橋さんからは『このチームの主将は、お前が思っている以上に大変だぞ。』と言われました。」当時主将だった石橋選手の『大変だ』という言葉、これは一体どういう意味なのだろうか。
平久選手はこう語る。「他のチームと比べて、マネジメント的なところを決めていかなければならなかったり、チーム全員が本気でフットボールをしているかと言うと、そうでは無い部分もまだまだあるので。そういったメンバーをいかに本気にさせるかっていう所が本当に難しいという意味で、主将は思っている以上に大変だぞ、という意味だと思います。」
チームをまとめ、先頭に立つ主将としての責任が双肩にかかる平久選手。彼はこうも話してくれた。
「アメリカンフットボールは、メンタル的にも身体的にも、他の部活と比較して、かなりしんどい事をやっていると思います。けれど、それを皆で乗り越えていくのもアメリカンフットボールです。皆で乗り越えるからこそ、見えるもの、得られるものがあると思います。」
春のオープン戦、その最終戦は、専修大学と同じく1部BIG8へ昇格した東海大学トライトンズだった。
試合は28-17で勝利したものの、試合の前半は始終東海大学にリードされ続け、後半になってなんとか巻き返すことができたという内容だった。平久選手は試合後ハドルでチームメンバーに対して『練習への姿勢』について、強く語りかけていた。
試合後ハドルで話す平久選手
「練習でやった事しか、試合では出ないと思っています。思い返してみると、東海大学戦の前の練習は気が緩んでいたものでした。練習でのオフェンスは、雰囲気も悪くてプレーの精度も上げられないままで東海大学戦を迎えてしまっていました。 試合までまだ時間がある時はエンジンがかからなくて、3日前あたりでようやく全員が本気でフットボールをやり始める。東海大学戦では、そういうのが全部出た試合でした。」
試合に勝っても厳しく反省を重ねる平久選手。「彼は良く物事を言えて、話せる人間。色々考えて、良くチームをまとめていると思います。」監督はそう話し、平久選手に全幅の信頼を寄せている様子が伺えた。
普段から監督と平久選手はLINEで頻繁に連絡を取り合い、緊密に連携をとっているとの事で、2人は阿吽の呼吸で連携が取れているという。
そんな監督からは、こんな一言もあった。「彼は興奮しすぎると、何を言ってるかわからない時がある(笑)。ハドルの時など特に。ただし、あれはあれで良いと思っています。ウチのチームは、あれぐらい言わないとピリッと来ないんです。」
平久選手に、秋シーズンに向けた抱負について聞いた。
「チームのスローガン『ALL IN』を意識してやっています。全員がやることを全てやる、という意味なんですけど。しかしそこがチームとしてまだまだ出来ていないと思うので、本当に全員がするべき事が何なのか、という事を考えて行動できるチームに、シーズンまで残り1ヶ月、それに向けてやっていかなければ、と思っています。」
最後に、これまで支えてくださっている方々への言葉を聞いた。
「やっぱり恩返しをする方法は、TOP8へ昇格する事、それだけだと思っています。と言っても、BIG8に上がってすぐに今年TOP8へ昇格、というのは難しい状況なのだとは思います。だけれど、これまで支援してくださっている方々のためにも、必ずTOP8へ昇格を果たしたいと思っています。」
これまでの主将の言葉と思いを受け継ぎ、1部リーグでの更なる飛躍を誓う平久選手。彼が率いる専修大学は今年、正念場を迎える。
記事・写真:三原 元(みはら はじめ)