• インタビュー
  • 2022.07.20

BIG8昇格1年目、「勝利」に執着出来るチームを|東海大学トライトンズ 小島大瑛

今年度より関東1部BIG8に昇格した、東海大学トライトンズ。

「今年の目標は間違いなく、BIG8で全勝してTOP8に昇格を決めることです。ですが、これはあくまでも今年の目標です。自分たちのチーム目標には甲子園ボウルがあります。今年はその大きな目標に向けた小さな一歩でしかないです」

そう力強い言葉で意気込みを語る主将のDL小島 大瑛(たいよう)選手に、昇格1年目の今シーズンに懸けるチームの強い思いをお聞きしました。

▼目次

    ■ 日本一を目指すチームの「在り方」を学んだ高校時代


    高校時代には強豪の東海大学付属相模高ラグビー部で日本一を目指し、3年間を過ごした小島選手。当時について「毎練習前にチーム内競争のプレッシャーで吐きそうになっていましたね」と振り返る。

    約110人の部員がいる中で6人が出場できるポジションを争っていた。当然、毎年優秀な選手が何人も入部してくる。ミスをすると一番に責めてくるのは、顧問の先生ではなくチームメイトだった。

    慢性的な怪我に悩まされながらも、怒涛の3年間を過ごした。

    小島選手(左)は高校時代から日本一を目指すチームに身を置いた(写真:本人提供)

    そんな厳しい環境を経て、大学ではアメフト部に入部した。入部当初から現在もプレーしているDL(ディフェンスライン)になった。

    今季主将になった理由を聞くと、高校時代から同じラグビー部でチームメイトの竹内 誠二郎選手(4年)の存在が大きかったと言う。

    「去年からチームの改善点や問題点を立場関係なく話していたのが竹内でした。主将になるのは自分か竹内しかいないだろうと思っていました。」チームで話し合った結果、小島選手は主将に。竹内選手は主務になった。

    主将はフィールド内外で強いリーダーシップを発揮する。それに対し主務は第三者的な視点で冷静にチームを俯瞰する。ある意味「陰と陽」のような関係性を持つ主将と主務が、高校時代に困難を何度も乗り越えた仲間であることで、チームをより強くする自信があるという。


    高校時代からのチームメイトが主将と主務に。今は共にセレモニーへ並ぶ(左:小島選手、右:竹内選手)

    「全国1位を目指すチームは普通のチームと在り方が違います。そういった環境で経験をしてきたからこそ、作られる価値観があります。自分と竹内はチームが今ここまで良くなってきているけど、更に良くするためにはここからどうするべきか、お互いに共通認識が出来ている。まだまだ2人でこのチームを強くさせられるんじゃないかなと思います」

    ■ 強くなるための土台を、自分達で作り上げる


    高校時代にしてきた経験と大学で出来る経験に、どんな変化があるのだろうか。東海大学トライトンズへ入部したからこそ得れる経験を聞いた。

    「高校時代は高校生とは思えない設備や戦術、指導者など環境自体がかなり恵まれていました。強くなるための土台が何もしなくても既に出来ていたんです」

    「トライトンズは逆で、組織としても個人としても強くなるための土台を一から作る形だったんです。自分が今まで何も考えずに強くなれた環境から、自分自身で考えて動かないと強くなれない環境になりましたね」と語る。

    学生主体で練習やチーム運営を行いつつ、本当に困ったことがあればコーチへ相談している。日々の練習でフルタイムのコーチがいないからこそ、選手一人ひとりの責任が大きく、主体性が求められている。

    高校時代とは真逆の環境だったからこそ、大きく成長することが出来た

    コロナ禍の影響で今シーズンに入ってからチームで対面のミーティングをしたのは約5回のみ。いつ活動が止まるか分からない中でチームを運営することに対して、不安を感じながらも小島選手は前向きだ。

    「大学からは自分の頭で考えて、試行錯誤しながらチームを強くしなくてはならないので、しんどいですがやりがいは今の方が大きいですね」

    どんな人がこのチームに向いていると思うかを聞くと「このチームって良くも悪くも発展途上のチームで、一人ひとりの選手がチーム在り方を変えられる貴重な組織だと思っています。勝つための組織を自分で作りたい、とか今の考えに囚われずに新しい形をクリエイティブに発想出来る人は向いていると思います」と語った。

    ■ 勝つために必要なことを学んだ、変革の一年


    小島選手が1年生時に2部との入替戦で明治学院大学に敗北。チームはBIG8から降格。翌年は昇降格の無い特別なシーズンを過ごし、チームにとって苦しい時間が続いた。

    当時のことを聞くと「勝とうって言葉では言うものの、行動がついてこないチームでした。本当に勝ち続けるために必要なことを知っている人が少なかったと思います」と語った。

    しかし、昨年チームに転機が訪れた。同じ東海大学付属相模高で野球部出身の大村鉄兵さん(DL、2022年卒)が主将になり、チームの練習への取り組み方や意識を180度変えた。

    「主将の鉄兵さんは勝ち続けるために本当に必要なことを知っていて、去年からチームが大きく変わりました。最初はチーム全員がついてきてくれる状況じゃなかったんですが、最後にはチーム全体がまとまり、結果としてBIG8昇格が出来たんです」

    チームはシーズンが深まるに連れて着実に成長。新たな文化が生まれ、結果がついてきたシーズンだったと振り返る。

    「今年は昨年チームが踏み出してくれた勝つための1歩を、どれだけ2歩3歩とに進められるかを試されています。鉄兵さんが作ってくれた勝つことに対する意識をもっとチームに植え付けたいと思っています。勝利に必要な事を全員で考えられるチームにしたい」

    ■ 全試合、チャレンジャーの気持ちで


    最後に、今シーズンに懸ける意気込みを聞いた。「今シーズンは全試合チャレンジャーの気持ちで挑みます。チャレンジャーだからこそ一戦一戦何にも囚われず、自分たちらしい試合をして着実に勝っていけたらと思います」と小島選手は語る。

    特にライバル視している大学については「間違いなく明治学院大学です。絶対に負けられないです」と即答。目の前の1プレーにすべてを懸ける意味を持つチームスローガン「ONE AT A TIME」を体現し、今シーズンを全力で戦う準備は万端だ。

    昨シーズンから変わり始めたチームを、どこまで成長させることが出来るか。今、東海大学トライトンズは生まれ変わろうとしている。

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