- インタビュー
- 2023.04.28
『未経験』からオールスター選出、後輩へ紡ぐTOP8昇格の夢|東海大学アメリカンフットボール部
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今年3月東海大学トライトンズを卒部し、Xリーグの強豪ノジマ相模原ライズに入団したOL(オフェンスライン)の谷藤範一(たにふじ のりかず)選手。
彼は2022年度の関東大学アメリカンフットボール連盟によるBIG8リーグのオールスター選手を決める『オールBIG24』のOL部門に選出された。
今回は谷藤選手にこれまでのシーズンを振り返って貰うと共に、彼が思いを託した選手にも話を聞いてきた。
▼目次
記事・写真:三原 元
「OLは『仲間を守れるポジション』って所が一番のやりがいだと思います。」
そう話すのは谷藤選手。彼は静岡県のアメフト強豪校、知徳高校ポセイドンズ出身。高校から続けたOLというポジションをトライトンズでも続けて合計7年。最後には『オールBIG24』のOL部門で選出され、BIG8が誇る最強のOLにまでなった。
東海大学 谷藤範一選手
「試合で自分達が守るOLの後ろにRB(ランニングバック)っていうポジションの選手がいるんです。僕たちOLが相手ディフェンスから守って作りだした隙間から、彼らが走り出して行ってくれる瞬間。あれが一番嬉しいですね。」
RBとは、ボールを持って突き進むポジションの選手。彼らが前へと進む為には、前から迫って止めようとする何人もの相手ディフェンスの選手達をかわさなければならない。そして、そんなRBを守るのがOLだ。
その他、同じくOLの後ろにいるQB(クォーターバック)がWR(ワイドレシーバー)にボールをパスするまで、迫りくる相手ディフェンスからQBを守り、パスまでの時間を稼ぐのもOL。アメフトにおいてOLはオフェンスの砦となる重要なポジションだ。
谷藤選手が昨シーズンで一番記憶に残っている試合、それは最終戦の防衛大学との試合だそうだ。
「あの試合は本当にギリギリの試合で、最後にオフェンスリーダーの田口選手が流れをガラッと変えてくれて逆転で勝てた試合でした。」
この試合では、あるプレー判定でお互いの選手が熱くなりすぎてフィールドの雰囲気が一触即発状態となる場面があった。そんな状況でも1人落ち着き、敵味方関係なく周囲の選手達を落ち着かせていたのが谷藤選手だった。
防衛大戦でお互いの選手達をなだめる谷藤選手
「自分は試合で熱くなる事があまりなくて、チームのまとめ役みたいになる事が多いですね。」
高校までは無口で、人と積極的に関わるのが苦手なタイプだった谷藤選手。そんな彼が周囲と積極的に関わり、まとめ役にまで成長した理由はアメフトだった。
「アメフトって究極のチームスポーツと言われるくらい、仲間とのコミュニケーションが大切になってくるんです。特に大学では選手の主体性が求められるので、なおさら自分の意見を言う必要があります。なので大学では周りに自分の考えを話す場面が多くなって、気づいたら自分の考えを普通に話したり、自分から周りと関われるようになってましたね。」
最後に彼に、次年度のOLを託す後輩選手が誰かを聞いた。
「後輩で河野ってOLがいるんですが、彼は2年生の時からOLのリーダーをやっていて、OLにとっていないと困る存在です。人前だとあまり話さない無口なタイプなんですけど、アメフトになると人が変わったかのように言うとこはしっかり言うし、何よりメンバーを引っ張って行ってくれる人間です。 一個下の学年でOLは河野1人だけなので、それもあって来年期待しています。」
谷藤選手が後を託した河野義貴(かわの よしたか)選手に次に話を聞いた。
「谷藤さんって、どんな時でも折れないんですよ。試合前にあの人から『大丈夫だよ河野くん』って言われると、どんな強い相手で緊張しても『あ、大丈夫かぁ』って思えるんです。そう言う意味で谷藤さんはデカい存在でした。」
小柄ながら激しいブロックが持ち味のOL河野義貴選手
河野選手は高校アメフトの名門、埼玉栄高校出身。東海大学へは「一番施設が揃っていて、いい環境でアメフトが出来る」と入学したが、時は2020年。コロナ禍が始まった。
「コロナで大学自体が閉鎖になってしまって、グラウンドにも行けませんでした。なのでしばらくはzoomで部員同士トレーニングをしていました。」
せっかくの大学生活はスタートからコロナにより、家に居なければならない日々が続いた。さらにその年の春は試合が全て消滅し、秋も公式戦が1試合だけという状況だった。大学1年でまだ新しい環境に馴染めないこの状況は、普通ならアメフトに対するモチベーションも下がってしまいがちだが彼は違った。
「他のチームメンバーはモチベーションが下がっていたと思います。でも、僕は逆に上がってましたね。だって他のメンバーが下がってるんだから、その分自分が頑張れば一番になれるかも知れないじゃないですか。まだ1年生の自分にとってこれはチャンスだ、よし!頑張っちゃうぞ!って思ってました。」
逆転の発想で努力した河野選手はその結果、翌年には2年生ながら公式戦に出場し、更にはOLのリーダーにまでなっていた。
今年のOLを引っ張っていく立場となった河野選手に、OLとして大事にしている事を聞いた。
「OLはフィールドの中心にいる選手なんで、僕たちが焦ったり感情が動いてしまうと、それがRBとか、オフェンス司令塔のQBにも伝わってしまうんですよね。彼らに安心感を与えて、いいプレーをしてもらうためにも、僕らがドシっと構えてオフェンスの殿になる事が大切だと思っています。」
そんな大事なポジションだが、なかなか成り手が居ないというのが悩みだそうだ。実際今年のトライトンズは、去年の4年生OLが3人抜けた穴をまだ試合経験がない下級生が埋め、更にはOLとDLを兼任する、所謂リャンメンとなる選手もいると話す。
しかしこういったOLの成り手不足はトライトンズだけで無く、他のチームでもよく耳にする。OLは他のポジションと比較して人気がないのが現状だ。
「OLが何で人気が無いかって、目立たないからなんです。ボールを持てないし、タッチダウンも決められない。だから観客席からの声援が自分達に向いてるって事があまり無いんですよね。」
そう話す河野選手だが、昨年の試合で強烈に記憶に残っている、ある出来事があると話す。
「昨年、自分達OLはQBサックを0にしていました。そしたらある試合で、自分達OLがタッチダウン後サイドラインに戻ってる時に、観客席から『OL、ナイス!』って大きな声で言ってくれた人がいたんですよね。その声を聞いた時に、あ~、このチームでOLやってて本当に良かったなと思いました。」
トライトンズの試合には毎回多くの観客が駆け付ける
時にOLは『アンサングヒーロー』や『縁の下の力持ち』などと言われるが、声援も応援もしなくていいポジションだと誰が決めたのか。彼らに声をかける事など、本当ならいつでも出来るはずだ。トライトンズを応援する人たちは、誰よりもその事を分かっているのかもしれない。
「見にきてくださる人たちだけじゃ無いです。トライトンズは、僕たちOLに感謝してくれる事が物凄く多いんです。例えば試合でタッチダウンすると、その選手って目立つじゃないですか、スポットライトが当たるみたいに。するとその選手が僕たちOLのところに来て『ありがとう!』ってやってくれるんです。 普段目立たない僕たちOLにも一緒になってスポットライトを浴びせてくれるというか、彼らが僕たちをチームの中心に居させてくれるんですよね。トライトンズって、そういうチームなんです。」
中でもチームで1番OLに感謝してくれる選手がいるそうだ。
「RBの小澤と、QBの岩田です。『OLが居てくれたからあのプレーが成功した』ってちゃんと言ってくれるし、僕たちに一番スポットライトを当ててくれます。」
こういったエピソードからトライトンズがOLに感謝してプレーしていることがよくわかる。
タッチダウン後一緒に喜ぶ谷藤選手
そんな河野選手がOLにおいて大切なことを語ってくれた。
「OLってコミュニケーションが本当に大切だと思います。そのためには、年功序列とか威圧みたいなものがない、学年関係なくフラットな状態が一番なんです。そうすれば試合中にお互い指示を出せるし、下級生も自分で考えるようになる。だからOLが1つのユニットとして強くなれます。去年の先輩OL3人がOLユニットをそんな雰囲気にしてくれました。 なので今年は先輩たちが残してくれたものを引き継いで、僕がOLを引っ張っていきます。」
最後に河野選手に、今年のOLユニットとして、そして河野選手自身が目指す目標を聞いた。
「自分個人の目標は相手DLとの1対1で負けない事です。特に明治学院大学セインツで今年主将になったDL90番の菅原選手。彼は去年戦った中で一番強かったので、今年は圧倒したいですね。OLユニットとしては去年達成した『QBサックゼロ』を今年も引き続き達成して、今年こそトライトンズでTOP8昇格を目指します。」
明治学院大学セインツのDL90番菅原選手と対峙する河野選手
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いかがでしたでしょうか?OLから作るチームの想いについて取材させていただきました。
これからもポジションや選手、チーム作りににフォーカスしたような記事を配信していきますので、乞うご期待ください!!