• インタビュー
  • 2022.10.07

『どんな相手でも関係ない』チームと共に最後まで走りきる|近畿大学ビッグブルー RB清水大和

関学大、立命館大、関西大。その3強に食らいつこうとする近畿大学ビッグブルー。昨シーズンはDiv.1で4位に。チームスローガン『貪欲』を掲げ、今シーズンこそアップセットを狙う。

そんな近畿大学ビッグブルーで、QBとして3年間プレーし持ち味の快足で一際存在感を見せる主将のRB清水 大和選手。

今季よりRBへ転向した経緯と、集大成となるこの一年に懸ける思いを聞いた。

▼目次

    ■ 「QBサック」されないように、高校で培った走力


    清水選手は大学1年生時からQBとして試合に出場。1年生かつQBとは思えない素晴らしい快足を飛ばし、計7試合で「420yds 5TD」を獲得。2019年シーズンのラッシング記録では2位に。驚異の活躍を見せ、リーグ内で一躍有名となった。

    そんな1年時のシーズンを本人は「『もうとりあえず目立ったろう』って一心不乱にやっていた」と振り返り、強豪である立命館大や関学大との対戦でも「どこが相手でもあんまり気にしてなかった」と話す。がむしゃらに出来る事をやり切り、突き進んだ1年だった。

    清水選手がここまで走力を身につけたのは、高校時代の経験が大きかったという。中学までは野球をプレーし、同志社国際でアメフト部のマネージャーだった姉の影響で、龍谷大平安高からアメフトを始めた。入部当初にコーチから「投げてみろ」と言われ、たまたま投げることが出来た。ポジションはすぐにQBに決まった。

    当時は部員数が少なく、11人ギリギリで試合を行うこともあった。試合ではOL(オフェンスライン)のパスプロテクションが持たないことが多く、「ボールを貰ったらすぐ走るしかない状況だった、そこから必然的に走る能力が身についた」と語る。

    高校3年間をプレーし、すぐに進路を決める時期に。「自分は新しい人と交流していきたいというか、そういう性格だったんです。龍谷大に行っちゃうと平安高校からの同級生がいるので。」と自分の性格と上位を目指す近畿大の取り組みを聞く中で、心が動いた。最終的に付属校である龍谷大には進学せず、近畿大に進むことを決めた。

    ■ 「100点満点中68点」、RBへ本格転向を決めた


    大活躍の後に迎えた、2年生のシーズン。1年時にした活躍から「天狗になって、パフォーマンスも下がった時は正直仲間からも信頼されていない感覚があった」と語り、4年間の中で「一番苦しかったシーズンだった」と振り返る。

    その失敗から自分自身の取り組みをゼロから見直し、「誰にも負けない努力をし続けた」そう語る昨シーズンには、チームからの信頼を取り戻し、2勝1敗でリーグ戦を終えた。

    客観的に見ると、ここまで順調に成績を残しているが、清水選手は「100点満点でいったら68点、練習で活かしたことが出来ていない」と少しの慢心も無い。

    「近大の中でどれだけ練習で活躍しても当然のことだと思っていて。いかに強いチームとの対戦の中で自分が活躍出来るかが、本当に上手い選手と上手くない選手の差。相手が強かろうが弱かろうが、その中でも活躍してやろうっていう気持ちがあるからだと思います。」上を見ることを忘れず、置かれた環境の中で今出来ることを取り組む。

    高校1年生から大学3年生時まで一貫してQBを務めたが、今季はRBとリターナーを兼務。より『走り』に特化するポジションに転向した。その決断には同期であり、同じQBだった中井選手(4年・開志国際)の存在が大きかった。昨シーズンから走力に優れる清水選手、パスに優れる中井選手と攻撃陣の中で併用が本格的に始まっていた。

    QB中井選手はサウスポー、精度の高いパスが強み

    併用起用が始まった当時、先発としてチームを長く率いた清水選手には驚きと悔しさがあった。「(中井が)元々パスが上手い選手ってことは分かっていて、パスの精度に関してはすごく尊敬していました。とはいっても『スターターは自分だろう』っていう思いだったり、最初は『マジか』っていう感じでしたけど、最終的には(昨シーズン)中井が居てくれたから勝てたと思ってるんで、今はそんなこだわらずに、という感じですかね。」

    今ではお互いにパスの投げどころや走るポイントなど、細かい意見交換をしているという。「僕が中井に『今のパスは違うWRに投げるのが良かった』とか、中井からは『今のは走った方がよかった』とか、お互いの長所を上手いこと盗み取るじゃないですけど、そんな感じでいいところを補うようにコミュニケーションを取ったりしてます。」今シーズンは2人の強みを最大限活かし、相手ディフェンスに脅威を与える。

    ■ 感じた3強との明確な差


    昨シーズンの最後の順位決定戦では惜しくも関西大学に敗れ、『4位』でシーズンが終わった。その関西大戦が今季主将になったキッカケになったという。「去年関大に負けた時にチームは『よくやったよ』みたいな雰囲気があった。正直、『いや負けてるのによくやったとかではないだろ』と思っていて。本当に上位の大学に勝ちたいって思っている自分がキャプテンになって、高みを目指せるようなチームにしたいなと思って、主将になりました」と語る。

    チームスローガンである「貪欲」と共に目標である3強入りがフィールドに掲げられる

    また、3強の一角である関西大との対戦でレベルの差を肌で感じた。「やっぱり一人ひとりの技術力が圧倒的に違う。例えばタックル外した後のパシュートの速さとかファンダメンタルが徹底されてるところが近大と違うなと思っていました」反対にフィジカルでは戦えるなど、対抗の糸口が見えてきているという。

    上位の大学に勝ち切るために、ファンダメンタルの向上はもちろん、昨シーズンから練習量が大幅に増加した。「去年とは比べ物にならない。走りもん(ランメニュー)とかは去年と比べても全然違うところです。」練習終盤に重たいスレッドを押し切る『フォースクォータードリル』に取り組むなど、試合終了まで100%で動くことが出来る体づくりに注力している。

    ■ 貪欲を体現し、チームと共に走りきる


    今シーズンは、プレーメーカーとしても、チームのリーダーとしても重責がかかる1年に。「自分が失敗やミスをすると、絶対に勝てないチームだと思っている。結果を見せないとダメだと思っているので、自分の発言には責任を持つ。チームとしては『貪欲』というスローガンを掲げているので、しんどい状況でも絶対にあきらめず、最後までやり通すことを大事にしたい」と意気込みを語った。

    憧れの選手は、かつて抜群のクイックネスを持ち味に、NFLで大活躍したWRチャド・オチョシンコ。3強との対戦はもう目の前。最後までチームと共に走り切る。

    この記事をシェア