• インタビュー
  • 2024.12.30

2年連続のチャレンジマッチ進出 今年こそTOP8昇格へ|駒澤大学ブルータイド

BIG8を負け無しで優勝した駒澤大学ブルータイド。チームは12月14日にTOP8昇格を賭けてチャレンジマッチに挑む。今回はそんな波に乗っているブルータイドに、悲願の昇格へ向けたチーム作りと、注目選手から話を聞いた。

▼目次

    記事・写真:三原 元

    ■ 低迷チームを常勝に変えた「勝ち癖」


    ブルータイドがチャレンジマッチに挑むのは昨年に続き2連続となり、チームはBIG8上位校として存在感を強めている。

    そんな彼らだが、数年前は戦績振るわずリーグ下位に甘んじ、負けたら2部降格の昇格戦に挑まれる側だった。当時の主将が「勝ち方がわからない」とまで言わしめた状況から現在に至るまでの快進撃について、主将の神崎選手は「勝ち癖がつきました」と話す。

    主将の神崎選手は高校ではラグビー部

    神崎主将「これまでのチームは学年やポジションで分断されていた印象でした。仲が良いメンバーだけで固まって、チームとして分断した状態。それが今は練習が終わった部室で「ここは良かった」とか「あれはまだまだ」って、ポジションも学年も関係なく話が出来ます。

    それによって雰囲気が良くなるのは勿論ですが、お互い褒めたり指摘することで選手一人一人の自力がつきました。それがチームの勝ち癖に繋がったのだと考えます。」

    コーチや同ポジションの先輩からのみ教わるより、部員全員が時に誰かのコーチ役となるほうが選手一人一人の成長に差が出るのは間違いない。飛躍的に強くなった駒澤大学だが、昨年のチャレンジマッチでは東京大学ウォリアーズと対戦し、21-35とあと一歩及ばずに負けた。当時3年生だった神崎主将はあの試合をどう感じたのか訊いた。

    神崎主将「プレーの重みが違いました。相手は負けたらリーグ降格なので、1プレーへの気迫というか、試合の一瞬一瞬に命賭けてるなと感じました。対して自分たちは挑む側で、負けてもリーグは変わりません。オフェンスとディフェンスが交代する時も「次いこう!次!」って雰囲気で、彼らみたいに1つのプレー、目の前の一瞬にこめているものが全く違いました。」

    昨年のチャレンジマッチは21-35で東京大学に敗戦した

    挑む側の自分達と挑まれる側の東京大学では1プレーの重みが違ったと話す神崎主将だが、それ以外にも理由があると話す。

    神崎主将「なんというか、あの時の自分達はチャレンジマッチまで来れたんだって思いの方が強くなってましたね。今思えば、あのときは昇格がゴールでなく、チャレンジマッチに挑めることがゴールになっていました。」

    昨年のチャレンジマッチの経験を踏まえ、今年の彼らはTOP8昇格へどう挑むのか。オフェンス・ディフェンスそれぞれのリーダーから話を聞いた。

    ■ チームの波を克服し昇格へ


    チームのオフェンスリーダー兼副将のQB久保孝香雄(タカラ)選手は、東海大附属高輪高校アメフト部出身。彼は2年生から公式戦に出場し、これまでQBとしての経験を磨いて来た。そんな彼から見て今年のブルータイドはどう見えるのだろうか。

    久保副将「オフェンスは昨年からメンバーがほとんど変わっていません。戦力が落ちずに今年も戦えているのはかなり大きいですね。そのメンバーで昨年より経験を付け、今年は技術もパワーも、TOP8のチームと比べて劣るものはないと考えています。ただ彼らとの違いがあるとすれば、ブルータイドには全体の集中力に波があることだと思います。」

    アメフトの他にウクレレも得意なんですと話してくれた久保選手

    保副将曰く「波が来てる時のチームはパスもランも出て強いです」とのことだが、チームはその波を自分達でコントロールできていないのが課題だそうだ。それはもう1人の副将も別の言葉で話していた。

    高橋副将「駒澤はスイッチ入ってからは強い、だけどそのスイッチが入るまで長いのが課題です。春OP戦で数年ぶりに早稲田に勝てたのも、その前の専修大学戦で負けて、これでいいのかってチームにスイッチが入ったのが大きな要因でした。けれど前の試合で負けたから自分達にスイッチが入った、というのは正直恥ずかしいと思います。」

    ディフェンスリーダー兼副将のDB高橋拓久(ヒラク)選手は横山隼高校サッカー部出身。チームのDBコーチである梅本忠資(タダシ)氏からは「昨年から更に成長したチームのベストタックラー。相手オフェンスのランもパスも完封してチームの小さな大黒柱として活躍してくれている」と評価され、ブルータイドディフェンスを名実ともに牽引する存在だ。

    ピアノ歴12年の高橋選手の十八番は「戦場のメリークリスマス」

    橋副将曰く、自分達でスイッチを押せるかがTOP8チームとの大きな差であり、昇格するための鍵でもあると話す。

    高橋副将「他力本願なチームはダサいです。練習もそうですが、コーチやポジションリーダーから言われないと気がつけない、やらない、誰かがやってくれるだろう、引っ張ってくれるだろう、そんな考えで動くのはダサい。チャレンジマッチで勝って昇格するためには、試合の入りが悪く相手にズルズルと行かれたり、途中から展開が悪くなった時に自分達で立て直そうと出来るか。今チームがヤバいから盛り上げようって心持ちが、選手1人1人にあるかだと思います。全員が自覚を持って取り組んで、自分達で自分達のスイッチを押せるようになる事がTOP8昇格には必要です。」

    チームの波を克服し、悲願のTOP8昇格へ向けて邁進するブルータイド。幹部陣から今シーズンのキーマンとなる選手を聞くと、共通して一人の名前が挙がった。

    ■ オールBIG選出を目標に 昨年のリベンジを誓う 3年OL武良健人


    武良選手は駒場学園高校アメフト部出身の3年生、ポジションは先ほどの副将、QBの久保選手を守るOLだ。QBの久保副将はOLの中でも武良選手がいる安心感は大きいと話す。

    久保副将「QBは死角からタックルされるのが一番怖いですが、彼が試合中にそこを絶対守ってくれるので安心してパスが投げられます。なので僕たちQBから彼への信頼は厚いですね。性格も主将気質というか、自分達4年生にもハッキリ言うし、下級生との関わり方も丁寧。いつもチームを引っ張ってくれる頼もしい存在です。」

    5個上の兄に憧れてアメフトを始めたと話す武良選手

    武良選手にOLというポジションについて、そして今年の抱負を聞いた。

    武良選手「OLはただ目の前のディフェンスを力でガードしていればいい、というわけでは無いです。相手ディフェンスの動きを見て考える、それも瞬時に判断するのが大事なポジションです。特にブリッツ(相手ディフェンスがQBを狙う戦術)の時には冷静に動きを見て判断し、後ろのQBを守る必要があります。自分はそのOLの中で判断も動きも早い自信があります。相手ディフェンスがどんなに速いスピードで来ても、それを上回る速さでブロックしてQBを守り、チームを勝たせてみせます。個人的な抱負はオールBIG選出です。これまで1年生から試合に出して貰ってますが、まだ選出された事が無いので。今年はそれを目標に、一試合も離脱すること無く全部の試合に出てチャレンジマッチに勝利します。」

    最後に彼に負けたくないチームを訊くと答えは「青山学院大学ライトニング」と返ってきた。

    武良選手「実は青学戦の前の試合で脳震盪になってしまい、しばらく練習も出来ない状態でした。そこから復帰した直後の試合が青学戦。なので本当に復帰して最初にアメフトの防具を着けたのが青学戦でした。それで負け方が本当にあと1プレイ、あと少しのところで負けてしまったので。もし自分が万全の状態で試合に出られていたらと考えると、本当に悔しいです。」

    青山学院の名前は、ここまで話を聞いた神崎主将、久保・高橋副将の3人からも負けたくないチームとして名が上がっていた。同じチームを挙げていた。

    久保副将は「あと1プレイ、自分のパスが決まっていたら勝てた試合なので悔しい」と話し、高橋副将は「自分のパスカバーのミスで相手を勝たせてしまったような試合でトラウマ」とまで話していた。

    彼らがリベンジに燃える青山学院戦は12月1日に行われ、チームは見事勝利し昨年のリベンジを果たしている。しかし試合展開は序盤で青山学院に0-14と点差を開かれ終盤まで膠着状態、そして4Qにブルータイドが2TDを決め14-14のタイブレークの末の勝利だ。幹部陣がこれまで話したチームのスイッチが、終盤になんとか入って辛勝出来たともとれる展開には、チャレンジマッチに向けて課題が残ったとも見える。

    昨年果たせなかったTOP8昇格の夢を今年こそ掴むことが出来るのか。チャレンジマッチの相手は中央大学ラクーンズ。12月14日(土)にチームは今年最後の正念場を迎える。








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