• インタビュー
  • 2023.10.20

【2023年秋の注目校Vol8 ~九州1部~】九州から「打倒関西」を現実に、全員で強い西南学院を作り上げる|西南学院大学グリーンドルフィンズ

1st downでは秋の開幕に合わせ、各リーグの注目校に取材を行い記事を発信!第8弾は九州西南学院大学グリーンドルフィンズです!

九州リーグをこれまで何度も制覇してきた西南学院大学グリーンドルフィンズですが、甲子園ボウルを目指す全日本大学選手権では関西リーグの代表校に何度も行く手を阻まれてきました。

今回はそんなグリーンドルフィンズの監督と幹部陣に、チーム悲願の打倒関西に向けた取り組みについて話を聞きました!

▼目次

    記事・写真:三原 元

    ■ 坊主にしても強くはならない


    吉野監督「このチームでは長髪も金髪もOK、ドレッドヘアーもOKです。ただし坊主はダメ。坊主禁止です。」

    監督の吉野至(よしの いたる)氏は関西の名門、関西大学カイザーズ出身。在学中は甲子園ボウルに出場し、日本一を経験した。吉野氏は現在、グリーンドルフィンズの監督と共に、X1SUPERに属する九州発の社会人アメフトチーム、otonari福岡SUNSの代表兼選手を務め、これまで両チームの躍進を牽引してきた。

    吉野氏はotonari福岡SUNSで現役選手としても活躍

    脇田主将「僕は高校で坊主だったので、入学してからも坊主頭でした。そしたら監督から『坊主やったら試合出さんよ』って言われて、慌てて髪を伸ばしました。」

    主将の4年RB/LB脇田選手は大阪の清風高校アメフト部出身でチーム唯一のアメフト経験者。吉野監督から『努力の男』と称される彼は誰よりもストイックに練習に励み、チームの九州リーグ制覇に貢献してきた。彼が出れば試合の流れが変わる。チームメンバーからそう言われるほど信頼されている反面、関西弁で強く指摘する姿には『怖い』『キツイ』と言われてしまう不器用な男だ。

    脇田主将が坊主だったのは「シャワーが楽だから」とのこと

    古川副将は「同期がオシャレな坊主にしてきても『お前ダメやん!』って凄く怒られてましたね。そいつはどうにかしないとって、次の日には頭を緑に染めて、芝生みたいにしてきました。それを見てやっと許してくれる位に、監督は坊主が嫌いなんだと思いますよ。」と話し、チームの雰囲気を語ってくれた。

    その古川副将は高校で陸上のやり投げ選手だった。彼は『陸上では自分だけ上手くなればいい、結果が出れば自分のおかげ』だったと話してくれた。個人競技のため全てが自分一人で完結していたため、アメフトを始めた頃は、自分だけ上手くプレーしても勝てない所が嫌だったそうだが、今では『今は勝った時に全員で喜べるのが何にも変えられないくらいに嬉しい。』という気持ちになったそうだ。

    脇田主将曰く古川副将は「誰よりも負けず嫌い」

    監督にそこまでの徹底した坊主禁止の理由について聞いた。吉野監督「『坊主に逃げるな』ですね。坊主でアメフトの勝敗は変わりません。坊主にしたから強くなる事もありません。僕は関西大学で日本一になりましたが、その時は誰も坊主になんてしてませんでしたよ。それに、髪の毛は意味があって生えてきてますからね。」

    監督側の理由とともに、新歓にも坊主禁止は意味があると話すのは脇田主将。脇田主将「部員が丸坊主って、新1年生からの印象が良くないんです。ただでさえ体がデカいのに、更に坊主なんて。見た目怖いし、悪目立ちして勧誘に影響が出てしまいます。」

    取材でも髪を自由に染めている選手が多く見られた

    ほとんどが大学からアメフトを始め、経験者が皆無の西南学院大学にとって勧誘は大事なイベントだ。そして勧誘は入部して終わりではない。1年生が部活に馴染み、定着してくれなければいけない。そんなグリーンドルフィンズでは春の試合から1年生が試合に出ている。その理由をもう一人の副将に聞いた。

    ■ 1年生が春から試合出場しモチベーションを上げる


    柴田副将「自分が1年生の時はコロナで部活自体が無かったので。今の1年生が春から試合に出ているのは羨ましいです。もし自分が入部して直ぐ試合に出られるなら、試合で結果だそうと思い、部活をもっと頑張ると思いますね。」

    1年生達が羨ましいと話すのは副将の4年K/LB 柴田貴徳(しばた たかのり)選手だ。高校ではサッカー部、大学入学時もサッカー部に入部するつもりだった彼だが、新歓でアメフト部を知り学生日本一という高い目標と、コンタクトスポーツの熱く激しい競りあいに惹かれて入部した。

    主将は柴田副将を誰よりもストイックで努力家と話す

    柴田副将「彼らは普段の練習では声出してコミュニケーション出来ていますが、試合では声出てなかったりと自分のことしか考えずにプレーしたりなど、自分たちの課題が見えてました。そうすると試合後に彼らは、次の試合に向けて練習でどう課題を解決出来るか、自分達で考えるようになったんです。」

    試合に出なければ見えない課題がある。試合で活躍するために練習で課題を解決しようと試み、1年生のモチベーションは上がり、練習に一層意欲的に参加するようになった。そんな1年生の中には既に試合で活躍し秋のレギュラーが視野に入る選手もいるが、そうなると上級生も刺激される。チームには互いに切磋琢磨する好循環が生まれていた。

    柴田副将のキック力は高校サッカーの経験が活きている

    1年生のことを話してくれた柴田副将には、吉野監督から言われて今でも残っている言葉があるそうだ。

    柴田副将「『努力のベクトル(方向)が正しくないとその努力は意味がないんだ』って言葉です。どれだけ努力をしていても、その方法が間違っていたら全く意味がないし、自分が今何をしなければいけないのか、それを常に考えて打倒関西を目指すんだと言われてきました。」

    歴代の先輩達がこれまで成し遂げられなかった関西の厚い壁を打ち破るためには、ただ努力をするのでなく、その量と方向が重要になると話す。だがどうやればその『方向性』を確認出来るだろうか。その答えは吉野監督が率いる社会人チーム、otonari福岡SUNSにあった。

    otonari福岡SUNSとの合同練習でレベルアップをはかる


    otonari福岡SUNSは創部僅か6年の同チームは実力も人気も高い、勢いのあるチームだ。

    グリーンドルフィンズは定期的に福岡SUNSとの合同練習を実施している。これは他の大学チームと比較すると恵まれた環境に映るが、選手たちはどう感じているのだろうか。

    柴田副将「レベルの高い社会人チームと合同練習ができることで選手の課題が見えてきますし、チームとしても選手個人としても努力のベクトルの修正ができていると感じています。サンズはまさに関西上位校レベルなので合同練習で勝てれば、それは関西のチームに勝つことと同じだと思っています。」

    サンズのRBにどう勝つかを考える事は関学のRBに勝つことに繋がり、サンズのOLに勝つことは立命館のOLに勝つことに繋がると柴田副将は話す。さらに「合同練習は土日の2回しかありません。いかにその2回の練習に向けて平日練で課題を潰せるか、誰がどのサンズの選手に勝つのかと考えて練習を行なっています。」と話す。

    福岡SUNSとの合同練習に励む

    また古川副将は「確実にチームのプラスになっていると思います。自分達だけの練習だと、どうしてもマンネリ化する部分が生まれてしまいます。多分合同練習が無かったら、僕らは弱いままなんじゃないかってくらいです。もちろん相手は社会人かつしかもX1SUPERの選手ですから強いです。だけど負けたらメチャクチャ悔しいです。なんとしても勝ちたいって、なんか熱くなれるんですよね。」

    一年生が春から試合に出て定期的に社会人チームとの合同練習や、その他様々な取り組みを行い、打倒関西を掲げるグリーンドルフィンズ。実際にチームの現状を監督はどうみているのだろうか。

    吉野監督「関西学院大学さんや立命館さんはそりゃめちゃくちゃ強いです。だけど勝つための壁はそんなに大きく無いとも見ています。アメフトは11人中4人が勝てたら、試合で勝てないことは無いスポーツだと思っています。ならば関西学院大学さんや立命館さんのディフェンスに11分の4勝てばいい、それが出来る選手がいれば試合に勝てる。そう考えると、打倒関西という目標は、そんなに無茶では無くなると思っています。」

    これまで何度となくグリーンドルフィンズを九州リーグ優勝に、そしてSUNSでは代表兼選手として創部わずか5年でX1SUPER昇格にまで導いた吉野監督。そんな氏が『打倒関西は決して夢では無い』と語る表情には自信に満ちていた。

    チーム悲願の打倒関西に向けて


    最後に幹部の3人に今シーズンの抱負を聞いた。

    柴田副将「自分は2年生から試合に出させて貰って、関西の大学とも戦ってきました。なので関西のプレースピードやRBの事を一番知っているのは自分だと自負しています。この一年はリアクションの速さを磨いて相手選手に負けない自信があります。チームは今年、これまでのようなスター選手がいません。その分ディフェンスは一つの組織として守る、そのために徹底したコミュニケーションをとって一つ一つのプレーに全力で取り組んでいきます。」

    古川副将「今年のチームもこれまで先輩達が積み重ねてくださった強い西南であり続けたいですし、打倒関西を果たしたいと思っています。その中で自分はレシーバーとして気持ちで負ける気は全然ありません。自分がやらなきゃいけない、全て全力プレーです。

    オフェンスは自分のプレーで試合の流れを持っていきますし、悪い展開の時こそ自分のプレーをきっかけにチームの流れを変えたいです。そして見に来てくださる方々も一緒に熱くなって、一緒に盛り上がれる試合をして、『感動した』って言って貰えたら嬉しいですし、ラストシーズンはそういう試合をしたいですね。」

    脇田主将「今年のスローガン「ギャザー」には2つの意味を込めています。1つ目は『全員が一緒になって頑張る』。これは今年人数が少なくスター選手もいないので、誰かに任せるとか、あいつがいるから大丈夫やと思わないようにと言う意味です。そう思ったらすぐにレベルが下がってしまうので。だから全員が試合に出て活躍するという意味も込められています。

    2つ目は『奮い立たせる』。いつもチームを応援してくださる方々がいるから試合が盛り上がるし、応援してくださる方々のおかげで僕らは試合で奮い立つ事が出来ます。グリーンドルフィンズは今年で50周年となり、50年分の先輩方がいます。その方々が積み重ねてきたものを引き継ぎ、そして皆さんの応援で自分たちを奮い立たせていきます。

    僕自身は今シーズンが学生最後のアメフトで、悔いは絶対に残したくないと思っています。絶対に自分が活躍して、先輩達がこれまで続けてきた九州連覇を途切れさせず、そして先輩達の悲願である打倒関西に向けて頑張っていきます。」

    3人の幹部は今シーズンにかける熱い思いを語ってくれた。まずはリーグ戦突破に向けてグリーンドルフィンズの今後の戦いに注目したい。


    いかがでしたでしょうか。今後も各リーグの記事を配信していきますので、乞うご期待下さい。

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