• インタビュー
  • 2023.10.14

【2023年秋の注目校Vol6 ~北海道1部~】「週2回」の練習で戦う北海学園大、リーグ優勝を勝ち取るための決意とは|北海学園大学ゴールデンベアーズ

リーグ開幕から激戦が繰り広げられる大学アメフト2023年シーズン!
1st downでは秋のリーグ戦に合わせ、各リーグの注目校に取材を行い記事を発信していきます。第6弾は北海道1部リーグに所属する強豪、北海学園大学ゴールデンベアーズ!

2023年10月13日時点でここまでの4試合全てを勝ちきり、未だ無敗。そんな破竹の勢いで勝ち星を重ねる北海学園大は来る10月15日、同じく4勝無敗のライバルである北海道大と全勝対決で激突する。

昨シーズンは惜しくも北海道大学に敗戦し、リーグ優勝の座を掴み取ることは出来なかった。今季こそ悲願であるリーグ優勝と全国大学選手権へたどり着くため、チームを牽引する主将のDB佐々木 祐弥(ささき ゆうや)選手に話を聞いた。

▼目次

    逆境に立たされた釧路公立大戦で得た収穫


    ここまで4試合全てを勝利で飾っている北海学園大だが、うち3試合は無失点かつ35点以上の大差をつけて勝利している。しかし、第3節の釧路公立大学戦で非常に苦しい試合展開を強いられた。釧路公立大学は近年着実に地力をつけはじめている勢いのあるチームだ。

    そんな相手との一戦を控えたチームの雰囲気を佐々木選手は「やっぱり甘く見てはいけないチームであったので、どんなに相手が強くても、トイメンが自分よりうまかったとしても、自分が負けないという気持ちの部分を大切にして試合を戦っていこうということはみんなで共通認識を持ってやっていました」と語る。

    (写真:本人提供)

    試合前半は第1Qで無事に先制点を決めたものの、その後の第2Q・第3Qでは完全に釧路公立大に試合の流れを掴まれた。2TDとFGだけでなく自陣でのセーフティも重なり、得点差は前半で12点差に。「前半はジワジワと攻められていたので、オフェンスとディフェンスの雰囲気も落ちてしまったり、いつも盛り上げられる選手も盛り上げにくくなってしまっていたので、チームの悪い部分が出てしまっていました」点差を離されてチームの雰囲気は徐々に落ち込んでいた。

    しかし、ハーフタイムでヘッドコーチがチームに語った一言でチームは前を向き始めた。「第2Qが終わった時に『大丈夫だ、いつも通りのことをやれば大丈夫』って言ってくださって、それがキッカケでチームは落ちるんじゃなくここから巻き返していこうという気持ちになっていきましたね」そこから見違えるようにオフェンスとディフェンスが息を吹き返し、RB高杉選手(3年)やWR成田選手(2年)の活躍もあり後半だけで24得点を決め、35-33で試合終了。

    貴重な1勝を掴み取った。逆境を自分たちで乗り越え、厳しい試合を勝ちきったチームはこれまでより力強くなったという。また、パスが特徴の北海学園大オフェンスの中で、ランでひときわ目立った下級生が一人いる。それが逆転の狼煙となったタッチダウンランを決めたRB高杉選手(3年)だ。

    小柄ながら力強い走りが魅力の高杉選手について、佐々木選手も「チームに明るい雰囲気をもたらしてくれるキャラクターですね。かつプレーも最後までやりきることの出来るプレーヤーなので、練習でも最後までプレーを続けて、走り込みの時間も誰よりもやる。本人はあまり気づいていないかもしれませんが、うちに秘めるパッションが強いと思います」と語る。

    高杉選手は高校までサッカーをプレーしており、アイシールド21がキッカケで知ったアメフトに挑戦することを決意。勧誘を受けた際に自分に合いそうな雰囲気や、もらったパンフレットに東北大や慶應義塾大と戦うまで勝ち進んでいる姿をみて実績があることも入部を決めた理由だ。

    「昨年まではOLのブロックを無視して外に逃げてしまったり、裏切ってしまうことが多かったんです。ただ高木コーチが春先に『OLを信じろ』と言ってくれてそこからOLが開けてくれるギャップを信じてちゃんと走ることが出来始めていると思います」

    「北海学園って道内ではパス主体のチームって言われることが多いんですが、ランもあるぞってことを周りの人に言わせられるくらいランユニットで目指していきたいです」と未経験ながらRBとしての技術やマインドを高木ヘッドコーチなどから着実に学び、他のユニットと比較しても人数の少ないRBユニットを牽引する。

    下級生からの声を大切に、地道に取り組んだチームの基盤づくり


    今季チームを牽引する主将という立場は佐々木選手自身が立候補したわけではなく、同期からの他薦だったという。「自分でもなんでみんなが選んでくれたのかわからない部分もあるんですけど、自分の良さは部員一人ひとりに対してしっかりと話を聞けることだと思います。そこが評価されたからこそ選ばれたのかなと思っています」と語る。

    (写真:本人提供)

    佐々木選手が部内でのコミュニケーションを意識し始めたのは、自身がこれまでの人生の中で発言したい時に発言出来なかった経験が多かったからだ。そのため組織を作る上で、なにより発言しやすい環境や関係を作ることを大切にしてきて。「下級生の言葉はすごく大事だと思っていて、下級生が誰でも発言しやすい環境を作ることを大事にしています。特に僕らみたいな人数の少ないチームはよりコミュニケーションを大事にしなくてはいけません」

    実際にチーム内でのコミュニケーションを促進するためにも、練習前後にホットスピーチという取り組みを継続している。これは一昨年に1学年上の選手たちが東北大学の練習に参加した際に行っていた取り組みを真似したもので、この合同練習をキッカケに自チームにも取り入れたそうだ。

    「1人2分くらいでその日の練習に対する意気込みや思いを話す時間を作っています。内容は全然自由にしていて、みんなの前で一人ひとりが話してもらうことによって、常に当事者意識を持ってもらえるような場になっていると思います」

    佐々木選手が目指す主将像を聞くと「チームの士気を高めていくことが主将としての役割だと思っています。自分の言葉や行動で気づいてくれる人がいたり、自分に共感して頑張ろうと思ってくれる人がいたりとか、周りのチームメイトがついてきてくれるような人になりたいと思っていますね」と語り、プレーで背中を見せながら引っ張る主将も多い中で、佐々木選手はチーム全員を巻き込むような視野の広い主将を目指していることを教えてくれた。

    週2回の練習だからこそ、効率的かつ本質的な練習に取り組む


    北海道1部リーグで長く強豪として戦い続ける北海学園大は、大学スポーツでは珍しい『週2回』の練習でチームづくりを行う。夏休みと冬休みは週4回に増加するが、それ以外の期間は基本的には週2回の練習だという。佐々木選手が入部を決めた理由もそこにあった。

    「他の大学アメフト部を見ても圧倒的に練習量が少ないというか、活動日が少ないんですよね。ただその少ない活動日数の中で北海道リーグで優勝して、本州のチームと戦える力をつけていくことが北海学園の魅力です。実際に入部前に週2回の練習で優勝している実績を見てすごいなと思いましたし、部活とプライベートを充実させるためのルールということであれば、入部してもいいなと思い決めましたね」

    週2回と練習回数が少ないからこそ、言い訳は許されない環境があり限られた時間の中で最大の結果を生み出すための練習を大切にしているとのこと。「逆に行ったら質の薄い練習を土日にしてしまったり、メンバー全員が毎週の練習量が少ないことに危機感を感じないと当然北海道では優勝できません。さらに勝たないと週2回の練習であること自体が魅力であることも伝えられないので、限界まで濃い練習を土日にしようというコンセプトでやっています」

    (写真:本人提供)

    アメフトから得たものを聞くと「ただやるだけでなく、反省をして改善して、またさらに反省をしてトライアンドエラーを繰り返す。自分のミスや失敗から目を背けない姿勢は、アメフトだけじゃなく私生活にも活きていると感じます」と語る。

    ■ 北海道大戦へ懸ける強い思い


    奇しくも2年前のシーズンも今シーズンと同様に最終節に北海道大と当たり、勝てばリーグ優勝が決まる重要な一戦だった。第4Qに21対14で北海学園大がリードしている状況で、北海道大オフェンスにボールが渡ったが、DBとして最後尾に構えた佐々木選手は相手が投げたロングパスをパスカット。そのターンオーバーで見事勝利が決まり、チームはリーグ優勝を決めた。佐々木選手が入部後、4年間で一番印象的だったプレーだったと語る。

    それから2年、ついに10月15日に迫った北海道大との全勝対決。昨シーズンの悔しさとともに、1年間常に意識してきた相手だ。防具をつけずボールも触らずに自分のフィジカルと向き合い続ける冬の厳しいトレーニング期間も、目標である北海道リーグ優勝やライバルである北海道大戦で敗北した悔しさを思い出しながら、「本当にこの取り組みで勝てるのか」を主将としてチームに伝えながら乗り越えてきた。

    因縁の相手との一戦に懸ける強い思いを聞いた。

    「すごく厳しい試合になると思いますが、去年の悔しさを果たすために自分たちは絶対に勝たないといけません。前節以上に自分が絶対に負けない気持ちを持ち続けて、試合が終わるまで気持ちの部分を強く持って戦いたいと思っています。本当に全てを出し切って勝ちたい。悔いは残したくないです。」

    4年間の最後の集大成、文字通り全てを懸けて有終の美を飾ることは出来るか。

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    取材後は仲の良さを伺える一面を見せてくれた。(RB高杉選手とDB早川選手)

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