ついに開幕した大学アメリカンフットボールの2023年シーズン!今季もTOP8は激戦の予感...!
1st downでは秋の開幕に合わせ、各リーグの注目校に取材を行い記事を発信していきます。
第3弾は関東1部TOP8明治大学グリフィンズ!
今年度から監督が交代し、新体制となった明治大学グリフィンズ。春には昨年甲子園ボウルに出場した早稲田大学ビッグベアーズと対戦し、27対7で勝利したのも記憶に新しいですね...!
今回は新体制となった最初の世代の主将、大澤舜(おおさわしゅん)選手と、彼を支える幹部陣に今年度のチーム作りについて聞きました。
▼目次
記事・写真:三原 元
「高校のアメフト部は人数が少なくて、他校との合同チームで試合をやってました。」そう話すのはグリフィンズ主将、DB大澤舜(おおさわ しゅん)選手。
今季主将としてチームを牽引する大澤選手
都立三田高校アメフト部で主将を務めたが、当時は人数が少なく、2、3年生を合わせても10人に満たなかった。同じ都内の佼成学園や足立学園、駒場学園といった強豪校とは人数でも環境でも程遠いなか、彼が進学先に選んだのは、彼の兄がかつて在籍した明治大学グリフィンズ。
「中学生の頃から兄の試合を見に行っていました。それでいいチームだなと思っていました。兄からはグリフィンズには他大学にない『学生主体』という特徴があると聞いていたので、そんな環境でアメフトをやれば、自分で考える力がついて良いんじゃないかと思ったんです。」
兄の背中を追って2020年に明治大学グリフィンズへ入部。それから3年経った今年、彼はグリフィンズの主将に選ばれた。伝統校として誇りを持ち、TOP8で毎年勝ち続けるチームで主将になることに対して大澤選手自身はどう思っているのか。
「自分は実力で選ばれた主将ではないと思っています。同期で主将を誰にするか話した時も、自分の名前を挙げてくれた仲間から『誰よりも真面目に練習に取り組んでいるから』とか『グラウンドで一番声を出しているから』を理由にしていました。」
プレー中にはディフェンスの最後の砦として安定感のあるプレーを遂行する
明治大学にはスポーツ推薦(通称スポ薦)があり、毎年全国の強豪校から選手たちが入部する。彼の同期にも副将2人を始めとし、スポ薦の実力者が多く在籍している。そんな同期の中から、日々のアメフトへの姿勢で主将に選ばれた彼の今年の抱負には『仲間を頼りにする』という言葉があった。
「副将の2人は下級生からずっと試合に出ているような、いわば実力が証明された選手です。なのでオフェンスやディフェンスそれぞれの事に関しては彼らに頼り、自分はもっとチーム作りの面に目を向けていこうと考えています。」
大澤主将が話すチーム作り。それは一体どんなものなのだろうか。
「1つ大きな軸として持っているのは『下級生がチーム運営に関わる』事です。今年のグリフィンズは4年生だけで日本一を目指すのは現実的に無理じゃないかと考えています。なので日本一になるためには下級生の力を頼る事が必要になります。」『4年生だけで日本一を目指すのは現実的に無理』と彼が話すのには、チームの選手層に理由があった。
「去年まで主力だった4年生が卒業でゴッソリ抜けて、今年は初めて一本目としてスターターになる選手が増えました。」
主将の言葉通り、今年4年生となる選手たちの中には初めてスターターとなる選手がいる。またQBは2年生の新楽選手や水木選手、RBなら3年生の廣長選手や井上選手といった4年生以外が主力だ。
画像左 QB新楽選手/画像右 RB廣長選手
今年グリフィンズが勝ち進み、日本一になるためには彼ら下級生の力が必要となってくる。では彼らの力を頼るためにどんな取り組みをしているのだろうか。
「僕自身、下級生の時にコロナ禍を経験して、当時はあまりチームに関わることが出来なかったと感じていました。けれど、今思えば下級生が意見しにくい環境でもあったんじゃないかとも思っています。そのため今年からは上級生・下級生の壁の無さを意識して、主将の自分からポジション関係なく下級生に話しかけにいったり、彼らがのびのびとプレー出来るような環境作りを心がけています。」
他にもこの取り組みについて話してくれた選手がいる。副将兼ディフェンスリーダーのDL今熊力丸(いまくま りきまる)選手だ。
メンバーから「ディフェンスの頭脳」と呼ばれDLユニットを牽引する今熊選手
彼は高校アメフトで昨年全国優勝した佼成学園ロータス出身。高校3年生の2019年、当時副将でディフェンス陣を引っ張っていた徳茂選手に憧れ、彼が率いたグリフィンズのディフェンスの一員になりたいと入部を決めた。
徳茂選手は2020年に明治大学を卒業し、今年の1月に国立競技場で開催されたJapan U.S Dream Bowlでは全日本選抜チームに選出されている。そして今年からはグリフィンズのLBコーチに就任した。
現在は富士通フロンティアーズに所属している徳茂選手(右から2番目)
徳茂選手が卒業から3年後、今熊選手はかつて憧れた選手の立場と同じ副将として、そしてディフェンスリーダーとしてグリフィンズのディフェンス陣を引っ張っている。
今熊副将「まずは各学年のリーダーをガッツリとチーム運営に関わらせています。毎日のように練習後に彼らを集めて『今日の練習どうだった』みたいに聞いて、彼らから出た意見を踏まえてやり方を変えていったりしています。これまでの上級生からのトップダウン形式だったのを、下級生からのボトムアップ形式になるよう意識しています。」
トップダウンをボトムアップへ。言葉で聞くだけでは簡単に聞こえるが、実際のチームでいざ変えようとなっても、すぐに変える事は簡単ではないはずだ。
なぜなら下級生を含めたチームの雰囲気そのものが変わらなければ、ボトムアップの肝である下級生が自由に意見できないからだ。大澤主将はそのために『自分から下級生とのコミュニケーションを意識しています。』とも話していたが、チームによっては主将が話しかけるとなると、下級生が萎縮しかねない。しかしグリフィンズではそうはなっていないそうだ。
今熊副将「主将は下級生から慕われてますね。弄られやすいと言うか、皆から愛されてる感じです。」
「あとは、主将本人が一般生(一般入試生)だから彼らの気持ちが分かって、スポ薦と一般生を上手く融合してくれてるのが大きいんじゃないかと思います。やっぱりスポ薦と一般生って、最初のうちは隔たりがあるんです。」
今熊副将が話す『スポセンと一般生との隔たり』とはどんなものなのだろうか。
「入部した最初は、スポ薦で入ってきた同期とどうやってコミュニケーションをとろうかなって思ってました。向こうは入学前から部活に来て先輩と仲良くしてるし、スポ薦だけでコミュニティつくっていましたし(笑)」
そう話すのは平松大河(ひらまつたいが)主務。彼は日本大学附属藤沢高校の野球部出身。高校2年時に肘を怪我し、野球を続けられなくなった。
「大学に行ってもスポーツをやりたいって気持ちが残ってました。けれどもう野球は無理。だから大学で新しく始めるなら何が良いだろうと考えていたんです。」
試合ではASとしてチームを引っ張る平松主務
そんな時に知ったのが、大学からでも始められて未経験者が多いアメフトだった。
「アメフトをやろう、じゃあどこで?ってなった時に浮かんだのが明治大学でした。理由は直感ですね。」
明治大学でアメフトをやろうと心に決めて入学した平松選手。しかしグリフィンズにはスポーツ推薦でアメフト部にやってきた経験者が多く入部していた。
「向こうはアメフト経験者、対して僕たち一般生はアメフト初心者ばかり。どうせ自分達たちの事を馬鹿にしてんだろうなって思ってました。」
しかし実際は違った。一緒に練習を始めると、何も分からない平松選手達一般性に、スポーツ推薦の彼らは親身になって教えてくれたそうだ。『スポ薦は自分達一般生の事をバカにしてるのでは』そう疑っていた平松選手からすれば、彼らの行動はかなり意外だったと話す。
「だから入部して、お互い仲良くなってから聞いたんです、『最初は突き放されるかと思ってたんだよね』って。そしたら『俺たちはアメフトを分からない状態で始める難しさを知ってるから。だからちゃんと教えるよ。』って返ってきたんです。それ聞いて凄いなと思いましたし、スポ薦って良い人達だなって思いましたね。」
中でも親身に教えてくれたのは同期のDB、久保田諒(くぼたりょう)選手だそうだ。
「それまで彼のことは『少し話しかけづらいな』と思っていたんですけど、その印象がガラッと変わった出来事でした。」
DB 久保田諒選手は2年生から公式戦に出場し活躍している
野球やサッカーなどはスポーツ推薦で入学した選手は小学生から競技に打ち込んできたような話を聞くが、アメフトではスポーツ推薦と言えど、そのほとんどが高校から始めた選手たちで差はわずか3年。しかも高校生から始めた事で、分からない時の苦労が嫌でも身に染みている。スポーツ推薦の彼らからすれば、一般生が経験する苦労は自分達がごく最近に通ってきた道なのだ。
「今では一般とかスポ薦とか、そんなの関係ないです。皆が仲良くなって、もうごちゃ混ぜです。」
スポセンと一般生で最初に隔たりができてしまう理由の一つに、スポーツ推薦は入学前からグリフィンズの練習に参加しているという事が挙げられる。同じスポーツ推薦の同期と馴染み、先輩とも先に仲良くなり、練習にも慣れる事が出来る、スタートダッシュのようなものだ。しかし、スポーツ推薦にも関わらずこのスタートダッシュを享受できなかった副将がいる。
■ 後編に続く(10月中旬公開予定です!お楽しみに…!)