• インタビュー
  • 2023.09.01

【2023年秋の注目校Vol1 ~関東2部~】「200人」超えの集客に成功、初開催のホームゲームで得た確かな感触|筑波大学エクスキャリバーズ

1st down編集部です。

いよいよ明日大学アメリカンフットボールの2023年シーズンが開幕します!立教-中央の試合が全リーグの開幕となり、そこから熱い戦いが始まります・・・!(非常に楽しみです!!!)

1st downでは秋の開幕に合わせ、各リーグの注目校に取材を行い記事を発信していきます。
第1弾は関東2部筑波大学エクスキャリバーズです!

今回は1部BIB8昇格を目指す彼らの活動と、TSUKUBA BOWL 2023を開催した筑波大学エクスキャリバーズから彼らがなぜその試合を開催したのか、そしてチームが今年にかける思いと取り組みについて話を聞いてきました。

▼目次

    記事・写真:三原 元

    ■ ホームゲーム開催のきっかけになった厳しい現実


    「これまでの公式戦って、応援に来てくれるのは殆どが部員の保護者やOB・OGの方々でした。けどTSUKUBA BOWL 2023は同じ大学の学生が一番多く来てくれて、自分達のプレーを見て、大声で応援してくれるんですよ。最高でしたね。」

    話すのは主将のLB渡邉 健陽(わたなべ たけはる)選手。彼にTSUKUBA BOWL 2023を開催した理由を聞いた。

    主将のLB渡邉 健陽選手

    渡邉主将「筑波って、ラグビーもサッカーも陸上もみんな強いんです。でも僕らアメフト部はそうじゃない。他の部活と比べて強豪とは言えないんです。彼らはクラウドファンディングで『ジム作ります』って募集すると、直ぐにお金が集まります。全国から凄い選手が入部して、全国にコアなファンがいて応援されている。本当に彼らは凄い。」

    ではアメフト部はどうなのだろうか。

    渡邉主将「肌感覚で分かるんですよね。サッカー部のチームグッズを付けてる人たちが、サッカー部の選手達をすごい人たちって目で見ているあの感覚、自分たちには向けられて無いなと。」

    今季は主将として、ディフェンスの柱としてチームを牽引する

    そのように話す渡邉選手だが、もちろん彼らはそのような状況に甘んじて来たわけではない。

    「昨年チームでは『学内でのアメフト部の価値を上げよう』ってテーマを掲げて頑張りました。でもどんなに頑張ってくれても、やっぱり実際に試合を見にきて貰わないと何も生まれないなと思いました。筑波の人からすれば公式戦会場のアミノバイタルフィールドは遠いため、秋の公式戦には中々来て貰えないのが実情でした。」

    そこで彼らはホームゲーム『TSUKUBA BOWL2023』の開催を企画し、試合を見てもらう機会を作ろうとした。また企画運営を任されたのは2年生のある選手だった。

    ■ 学内での横の繋がりを強化し、集客を狙う


    「やるからにはただ試合をするのでなく、これからあるべきホームゲームの姿、エンタメ性を持たせたイベント形式にしたいと考えました。」

    そう話してくれたのは、TSUKUBA BOWL 2023の企画から運営までをリーダーとして取り仕切った2年生RB菊地 康介(きくち こうすけ)選手。

    「大学に出す諸々の申請やInstagramの投稿計画を作成したり、実況の人やハーフタイムショーに出演してくれる団体と交渉したりと、やることは沢山ありましたね。」

    その他にも配布用のチラシを作成して、当日までに配布する計画も実施したそうだ。

    当日はRed Bull社によるサポートもあった

    様々な準備をして当日を迎えるまでに、菊地選手が一番大事だと感じたことを聞いてみた。

    「一番大事だと思ったのは、繋がりを作ることです。これまでアメフト部は部の中だけに留まっていました。というより大学の部活が閉じていて、横の繋がりがあまり無かったんです。だから他の部活の試合を見に行くことがありませんでした。繋がりを作るために女子サッカー部とコラボ動画をしたり、ハーフタイムショーに出演してもらうダンスサークルや応援団とInstagramの共同投稿を企画しました。」

    会場には筑波大学応援部WINSも応援に駆け付けた

    (共同投稿とは、投稿主(今回であればアメフト部と女子サッカー部)となった2つのアカウントで同時に投稿するもので、投稿がお互いのフォロワータイムラインに流れ、露出機会の増加が見込める。)

    「例えばハーフタイムショーに出てもらう『Realjam(リアルジャム)』さんは大学内でかなり有名な団体です。彼らと共同投稿することで、彼らのファンにも僕たちを認知して貰えます。僕たちの広報に彼らの力を借りることができます。」

    ハーフタイムで踊りを披露するRealjamの面々

    こうして様々な団体と繋がり、彼らの影響力を借りて広く告知をすることが出来たTSUKUBA BOWL 2023の観客数はどうだったのだろうか。

    菊地選手「TSUKUBA BOWL 2023で一番来て欲しいのは、同じ大学に通う筑波大生でした。来場者の集計からは彼らの比率が一番多く、次点で部員の保護者の方々。集客人数も自分達の規模感なら200人来たら凄いって感覚だったのが、実際には予測を超えた243人の応募がありました。正直に言ってこの結果は嬉しいですし、成功したと思います。」

    当日はプレーの実況も行われた

    また、集客に関しては菊地選手がこう話す。

    「集客効果を上げる一番の要因は、チームが強くなることです。お客さんを呼ぶ為にエンタメ面を努力すると共に、僕たちがアメフトチームとして強くなる事が大事だと考えています。」

    一番の集客効果はチームが強くなることだと話す菊地選手。そんな彼らエクスキャリバースは昨年1部に昇格したものの、全戦全敗のリーグ最下位となり、自動降格によって今年は2部からのスタートだ。

    ■ 昨期の悔しさを晴らすため決めた「2本の柱」


    まずは昨年のシーズンを主将に振り返って貰った。

    渡邉主将「凄い大変でした。フィジカルでは勿論、プレーのスピード感が2部とは全然違うと感じました。昨年は練習試合も含めて本当に一勝も出来なかったです。今年は勝てるチームを作るべく、2つの事を柱にして活動しています。1つ目は人数を確保すること、2つ目はフィジカルを向上させることです。」

    彼らはこれまで新入生勧誘の目標人数に達していなくても、新歓期間を過ぎれば募集を辞めていた。それを今年は目標人数になるまで新歓優先、練習はやらないと決めて勧誘を行った。

    「粘り強く活動をしたお陰で今年は部員20人、スタッフ5人が入部してくれました。アメフトは人数がいればいるほどいいスポーツです。なので一つ目の人数確保は本当に大事です。また2つ目のフィジカルアップについては、3年生の牧山 輝壮(まきやま てるあき)がチームのウエイトトレーニングメニューを一新してくれました。彼は医学部で学んだ最新のトレーニング知識をチームに展開してくれています。」

    3年DB牧山選手

    牧山選手「自分がトレーニングで変えた事の1つは『負荷量を数字で決める』ことです。これまでは『筋肥大をさせたいから8レップを3セット』という感じでメニューを決めていました。今は『総回数は何回、強度は何%に抑えて実施』と数字で細かく決めてメニューを組んでいます。これを練習の強度などと合わせて行えば、練習の疲労による怪我の発生確率を抑える事が出来ますし、怪我を抑えながらも負荷を上げて、より効果的に練習もトレーニングも出来るようになります。」

    現在チームでは選手1人1人の負荷量等の数値を管理し、その変動などを分析することで個人に合ったトレーニングが行えているそうだ。

    牧山選手「2つ目は、これまでチームで行っていたトレーニングの問題点を体育学部の大学院生トレーナーに提示してその解決策を教えていただき、チームに還元しました。アメフトが最新の情報を取り入れてアップデートが必要なように、トレーニングもアップデートが必要だと考えます。」

    アップデートをすると言っても下手な情報に飛びついて非効率なトレーニングをしてしまっては意味はないが、筑波大学なら体育学部の院生という安心の存在がいる。

    「彼らに指導してもらうことで、この研究でこんなデータが出ているとか、こんな手法が有効だというように、理論に基づいてメニューを組む事が出来ます。指導する側の大学院生も、実データを自身の研究に活かせるというメリットがあるので積極的にチームに関わってくれます。」

    最後に牧山選手はこうも話していた。

    「理論に基づいた正しいトレーニングに対して、正しく努力をする。そうすれば生まれつきの才能で高いパフォーマンスを発揮している選手達との差は、どんどん小さくなります。高校からアメフトをやってきた選手達がしのぎを削る私立の強豪校に対して、技術で勝つのは難しいです。けれどその分アメフトの戦術や、トレーニングによるフィジカルで優位に立てばいいと考えています。」

    ■ 学年関係なく、自主性を尊重するチームへ


    トレーニングを3年生の牧山選手が改革し、TSUKUBA BOWL 2023のリーダーを2年生の菊地選手が任されるエクスキャリバーズ。彼ら4年生以外の選手がリーダーを任され、能動的に動いているのには主将の考えがあった。

    渡邉主将「4年生だけで決めるチームというのが嫌でした。下級生だからなにも意見が言えないのは楽しくないじゃないですか。以前は4年生だけで決めていたのを、今年からは下級生も含めた3年生をリーダーにして役職を与えて、4年生は彼らに関わる形式にしました。」

    それ以外にも主将がチームで変えたものがある。

    渡邉主将「部則です。これまでは『やってはいけない事』を羅列したもので、例えば『このエリアに自転車を止めてはいけない』『飲酒禁止』といったものが大半でした。でもそんなのは筑波大生として当たり前です。それよりも自分が本当に大事にして欲しい心の行動規範のようなものを部則にし、細かい判断は選手個人を信頼して、各々に考えてもらう事にしました。」

    上から強く部員を管理するものではなく、理念に基づいた自主性を尊重するものにしたかったと話す主将に今年のチームスローガンについて聞いた。

    「今年のスローガンは『Breakthrough』です。これは体力的・技術的・精神的に限界突破をしていこうという意味になります。部員の1人1人が限界突破をし続けることで自分達の基準を上げつづけ、シーズン全勝優勝で1部昇格を目指します。」

    彼らの初戦は9月18日防衛大学だ。様々な改革を行い、チームに新しい風が吹くエクスキャリバーズの今年の活躍に期待したい。

     


    いかがでしたでしょうか。秋の注目校を配信して参りますので乞うご期待下さい!!!

    この記事をシェア