• インタビュー
  • 2023.04.13

「ここでしか味わえない4年間がある」横国大が語る新歓のリアル|横浜国立大学アメリカンフットボール部

「コロナもあって、国公立はどこも部員が少なくなっていると聞きますし、実際僕の代もコロナで人数が激減しました。けどもう一度昇格して、今度こそTOP8に定着するためには、人数が絶対的に必要になんです。」

話すのは横浜国立大学(横国大)マスティフスの4年WRで、新入生勧誘(新歓)チーフを務める大和田 滉樹(おおわだ ひろき)選手。

昨年、チーム史上初となる1部TOP8へ昇格した同チーム。彼らが並居る私立大学を振り払って昇格できたのには、新勧でポテンシャルの高い新入生を獲得出来たからと言っても過言ではないはずだ。

今回はそんな横国大に新歓のやり方を聞いてきた。

▼目次

    記事・写真:三原 元

    ■ 国立大の新歓事情


    「僕たちが勧誘活動を始めるのは国公立の前期合格発表からです。とはいえ、横国は全国から新入生がくるので、その時点で彼らはまだ地方にいる場合が多いです。なので、3月中はSNSでの活動がメインですね。」

    SNSでは新入生から連絡をしてくれる場合もあるが、基本的には部員からのアプローチがメイン。彼らは<#春から横国>などのハッシュタグで新入生を探したり、チームや部員のアカウントで履修相談を受け付けたりして、新入生にアプローチをかけるそうだ。

    新歓チーフの4年WR大和田選手

    「あとは、大学のお手伝いサークルのような人たちが企画運営する、入学前の学科ごとの交流会みたいなものに部員をスタッフとして送り出しています。もちろんこの時に自分たちがアメフト部だとは前面に出しません。あくまでも新入生と仲良くなることが目的です。」

    入学前にSNSやリアルで新入生と繋がりをつくり、そして4月から本格的に彼らは動き出す。

    「4月からはイベントを開催します。フラッグフットとか、練習見学会などを企画して、3月中に仲良くなった新入生を呼んだり、声掛けで集めたりします。具体的なイベントは、脱出ゲームや簡易版のフラッグフットボールとか。あとは練習体験会といって、ボールを投げてみたりRBの動きをやったり、トレーナーのテーピングなどスタッフの体験もやっています。」

    その中でも一番盛り上がるのはフラッグフットボールだそうだ。

    「フラッグフットボールはタッチダウンをとった時に皆で盛り上がれるし、チームに分かれてやるので団結が生まれやすいんです。新歓では新入生が心の底から楽しめるそういうイベントをやっています。イベントでは勧誘PVを流したり、イベント後に食事会をしたりして、自分たちのことを知ってもらうことに注力しています。」

    ■ 見た目で変わる第一印象


    各種のイベントや声かけの時に気を付けている事を聞いた。

    「身だしなみです。特にイベントで部員参加の時は『絶対に綺麗めな私服で行くように』って言っています。」

    新入生が部員から受ける第一印象は、そのままチームに対する第一印象となる。そしてそれらに一番大きく影響を与えるのは見た目だ。だからこそ彼らは見た目に一番気を配るそうだ。

    「私服でドレスコードみたいなものは特にないんですけど、ジャージとかだらしない恰好で参加するのはダメです。そういった恰好を新入生が見るとマイナスなイメージになってしまうので。あとは、新入生へは自分たちから話しかける事が多いので、向こうが話したくなるような雰囲気を心がけています。例えば常に笑顔を心がけるとか、自分のテンションを一段上げて話しかけるといった事ですね。」

    しかし、どんなに見た目に気を付けても、それだけで新入生が入部を決めてくれるわけではない。 

    「見た目もそうですけど、一番は部員が新入生から『この人なら頼れるな』って思われるかだと思っています。新歓で関わった部員の中に、新入生にとってそんな存在が1人でも見つかること、それが入部に大きく関係すると思います。その為にはやっぱり新入生の側に立って、僕ら一人ひとりが接する事ですね。」

    見た目の第一印象、そして寄り添い方と心を配る彼らだが、それでも新歓ではある格差が生まれていると話す。その格差とはいったい何なのだろうか。

    ■ 部活で差が出る新歓格差


    「野球部やサッカー部って毎年新入生が多く入部するんですが、彼らは高校からその部活をやっていて大学でもそのまま入部するパターンが多いです。だから彼らは特に勧誘しなくても、新入生がどんどん入っていくんです。」

    彼らが新歓で痛感するのは、高校でやっていた部活の強さ。アメフトはカレッジスポーツと呼ばれるほど大学で始める人の方が多く、野球やサッカーと比べて知名度などで相対的に不利となってしまう。

    「そうなると競合するのはラクロス部ですね。アメフトもラクロスも大学から始める人が多いスポーツなので、その分お互い積極的に勧誘しています。なので新歓をしていると「アメフトかラクロスかで迷っています」という新入生が出ててくるんです。」

    他の部活よりも新歓では不利となり、競合する部活もある中で彼らはそんな差別化をしているのだろうか。

    「新入生には『ここでしか味わえない4年間がある』ってメッセージを伝えています。」

    「サークルや他の部活で過ごす4年間よりも、マスティフスで過ごす本気で勝ちにこだわって挑む4年間の方が、人として成長できるよねっているのは自信を持って言っています。もちろん他の部活が勝ちにこだわりがない、本気ではないってことはないです。けど自分たちはそのレベルが一段上。本気の度合い、勝ちにこだわる姿勢が違います。」

    大和田選手が自信を持ってそう話すのには、自らの経験が関係していた。

    「自分自身、新入生として入ってきた時にマスティフスの練習を見学して、当時の先輩たちの姿を見て惹かれるものがあって入部しました。なんか練習に活気があって、目標をグラウンドに掲示してて、当時新入生でアメフトのことを何も知らない自分でも、本気で頑張ってることが見てるだけで伝わってきたのを覚えています。」

    4年生の大和田選手がそう話す入部当時の事を、では昨年入部したばかりの新2年生から見てどうだったのだろうか。2年の宮本 響(みやもと きょう)選手と高森 智己(たかもり ともき)選手に聞いてみた。

    宮本「SNSで誘われたのがアメフト部に興味をもったきっかけでした。自分は高校で剣道をやっていて大人数でやるスポーツは初めてで心配だったんですけど、見学した時に部の雰囲気が凄く活気あって、先輩たちも楽しそうにやっていたのを見て、それならって思って入部しました。」

    昨年1年生ながらセンターで活躍した宮本選手

    高森「僕は高校まで野球をやっていたので、入学してから大学でも野球部に入るつもりでした。それが大学歩いてたらアメフト部の先輩に声をかけられて、アメフト部の新歓に参加していくようになりました。そしたらチームが凄い和気あいあいとしてて、それでもシッカりするところはしてて、それを見て大学で新しい事に挑戦するのもいいかなって思えて入部しました。」

    同じく試合で活躍した高森選手

    ■ 相手に寄り添う関わり方


    大和田選手に、新歓での新入生への関わり方で気を付けている事を聞いた。

    「入部するにあたって不安なことって沢山あると思うんです。バイトできるかな、帰省はできるのかな、お金はどれくらいかかるのかな、とか。僕らはそういう不安を一つ一つ、部員が新入生の話を聞いて、解決しながら『一緒に頑張ろう』って関わっていきます。それで新入生も最後には自分で入部を決めてくれますね。」

    そこまで寄り添うのには、アメフトの経済的な事情も関係していた。

    「アメフトって正直お金がかかる部分があります。そういうことって新入生にとってはネガティブな情報になってしまうんです。だからこそ、そういったネガティブな部分では嘘をつかないようにしています。練習はゆるいよとか、毎日1時間くらいだよとか、そういう嘘をつくよりも、もっとこの部の魅力を新入生に伝えて彼らの心を動かしていこうとします。」

    大和田選手が話す言葉の中にあった『部の魅力』。それは具体的にどんなものなのか聞いた。

    「本当の仲間ができること、目標を持って4年間過ごすことが出来ることですね。ただの仲間なら部活でなくても、どこでだって直ぐに作れます。でも本当の仲間っていうのは違うんです。部員はきつい時、苦しい時、楽しい時もずっと週5日一緒にいます。同期も後輩も本当にそういった全部の時間を一緒に経験していますし、引退した先輩とも今でも繋がれています。そういった本当にキツイ時間、楽しい時間、それらを合わせた全部の時間を一緒に共有したからこそ出来るのが、本当の仲間だと思っています。」

    最後に、どんな新入生に入って来て貰いたいか聞いた。

    「大学生活の4年間で成長したいと思っている人です。目標に対して貪欲に、誠実に向き合えるような人。そんな人には是非マスティフスに入って来て欲しいと思います。彼ら含めて新歓で最後に伝えるのは、『君の力が必要なんだ』ってことです。誰でもいいんじゃなくて、本当に僕らは君自信を必要としているんだ、君が来てくれるのを待っているんだって伝えます。」

    横国マスティフスは昨年TOP8に昇格しただけでなく、これまでBIG8の上位校として常に昇格まであと一歩と迫ってきた実力校だ。そんな彼らの強さの理由には、新歓で新入生1人1人と寄り添って部員を獲得する姿勢が影響しているに違いない。

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