- インタビュー
- 2023.09.29
【2023年秋の注目校Vol4 ~関西Div.1~】関大の「盛り上げ隊長」DL竹並、憧れ続けた舞台に立つため決めた覚悟|関西大学カイザーズ
- #関西大学
1st downでは各リーグの注目校に取材を行い記事を発信していきます。第14弾は関西Div.1の関西大学カイザースです!
今シーズンは惜しくも抽選によってリーグ優勝を逃したものの、オフェンス/ディフェンスそれぞれにタレントを揃え、春秋どちらも王者である関西学院大学を破りました。
今回はそんな今シーズンの関大の得点力の中核を担ったエースQB須田選手に話を聞きました。
▼目次
須田選手のアメフトとの出会いは小学5年生。野球は小学1年からやっていたが、5年生あたりから怪我が重なり物足りなくなってきた時に、小学校のクラスでたまたま配られたチラシに西宮ジュニアブルーインズの体験会の案内が入っていた。それに応募したのがアメフトと出会ったキッカケだそう。
「ラグビーやってる友達もおって、それが楽しそうで。頭も体も全部使って全身でぶつかっていけるのに魅力を感じて、シンプルにラグビーより見た目かっこいいな、みたいなほんまに軽いノリで始めたような感じですね」
小学校時代の野球では現在同じチームでエースCBして活躍する須川選手とたまたまチームが一緒だった。そんな須川選手も須田選手と同じアメフト体験会のチラシを見て、参加を決意。野球部以来に体験会場で出会った須川選手が本気でアメフトに挑戦する姿を見て、須田選手自身も刺激を受けて、アメフトを始めることを決意したという。
小学生時代のチームでは須田選手がセンター、須川選手がQB。今では考えられないが須川選手にスナップを出していたという。それが今では須田選手はエースQB、須川選手はエースCB。漫画のような関係性だ。
(写真はすべて本人提供)
須川選手は高校から関東に引っ越し、クリスマスボウル優勝経験もあり強豪である佼成学園に入学。そこから3年後、関西大でアメフトをもう一度一緒にプレーすることになった。「照らし合わせたとかではなく、ほんまにたまたま関大で一緒にアメフト出来てるんで」
そんなアメフトと出会ったばかりだった小学生時代と兵庫ストークスでプレーした中学生時代のことを振り返ってもらうと、謙遜した答えが須田選手から返ってきた。
「小中の時は無名中の無名でした。周りを見ても自分より優れている選手がいっぱいおって。今のリーグの中でも有名な人がたくさんいる中で『自分はそこまでやな』と思ってましたし、言うたらドラフト外の選手やなって感じですね」
「次元ちゃうんかなと。すごい人たちと自分の違いを受け入れられてたんで。悔しいとかも正直無かったですね。ただ、別に劣っててもチームで勝てたら良いなってみんなで頑張ってましたね(笑)」
小学校・中学校とプレーを続けてきていたが、どちらのチームでも関西学院大学出身のOBのコーチが多かった。
「その環境でしかフットボールしてきたことはなくて、アメフトがどんなスポーツなのかとか、どこが有名で人気なのかとか、小学生の自分は知る由がなく続けてきたんで、そのまま関学に行くもんやと思ってました」
その言葉の通り、須田選手の中で進学先の候補としては関学が最有力であった。ただ進学先が決まりつつある秋シーズン初戦を終えた後、ある人から声をかけられた。
「たまたま関大一高の水村先生が兵庫ストークスのグラウンドに足運んでくださって、うちでアメフトせんかって言われて決めた感じですね。めっちゃ必要としてくれたのがシンプルに嬉しくて、そこから調べたら関大一高は大阪の中でも名門で伝統のあるチームだったので、練習を見に行ったらやっぱりレベルがすごく高くて。当時の自分からしたらマジかって思ったんですけど、やっぱり強いところでやりたかったのが一番で、それが出来る環境がめちゃくちゃ整っていたので、ここでやりたいっていうのはありました」
(写真提供:北川直樹様)
関学と関大は大学アメフトの中でも歴史の長いライバルだ。そんな中で関学高ではなく、関大一高に進みたい旨を両親に伝えた。これまで小中とお世話になったコーチの方々の思いを含め、たくさん話し合った結果、関大一高に進学することになった。
「小中と我流でやってきて、フットボールの基礎を教えてくれたのは小中ですけど、応用とか技術を伸ばしてくれたのは関大一高での3年間です」
現在大阪公立大学で活躍するQB篠原選手を含め、偉大な先輩たちに囲まれ、下級生時から偉大な先輩のプレーを間近で見ることが出来たのは、今の須田選手にとっても財産になっている。
「本当に環境と出会いに恵まれたと思っていて、そのおかげでフットボール選手として伸びることが出来たと思っています」
何よりも現在関西大の監督を務めている磯和監督との出会いが大きかった。高校入学当初から手塩にかけて育ててもらい、須田選手の特徴を理解し強みや武器を見出してくれたのも磯和監督だという。実際にスターティングQBとして出場する年にはチームのオフェンススキームを、それまで主流として行なってきたオプションプレー中心ではなく、須田選手の強みが最大限生きるロングパスを多用するオフェンスに変えたとのこと。
「自分が走ることだったり、奥に投げることは自分の判断で自由にやらせてもらいました。ミスしても責めることなく出来るようになるまで何回もチャンスをくれましたことはありがたかったですね」
成功も失敗もどちらもたくさん経験したことで、須田選手の最大の武器である機動力と強肩を活かしたオフェンスが磨かれ、今のようなプレースタイルにつながっているという。
また、現在のプレースタイルの大元の始まりは当時スターターQBとして活躍していた篠原選手のクォーターバッキングだった。
「当時の自分からしたらロイドさん(篠原選手)のプレーを見て、こんな走っていいんやって感じでしたね。走りながら投げたり、オプションで自らキープしてゲインしたり、こういう感じで良いのかと思って、自分も真似しようと思ったのが自分のスタイルの始まりですね」
「あの人はすごく現実的かつ確実で、決して派手では無いですけど確実に勝てるQBだと思っています。もちろんそこを目指してやってきたつもりなんですけど、自分は派手な分、ミスも派手というか。そこは確実性は追い求めている部分ですが、今でもロイドさんを超えたなと思えることは無いですね」
関大でQBとして出場経験を積み、今季で3年目。昨シーズンを振り返ってもらうと「すごく波のあるクォーターバック」だったという。一番の反省はリスクとリターンのバランスを考えてプレーを心がけたものの、試合では練習より力が入りすぎてしまい、いつも通りのプレーができなかったことだった。
「去年は勝てるQBとしておれたらそれでいいかなと思ってたんですけど、いざ試合が終わって記録を見て『マジか』と思うことが多かったですね。これはもっと確実に丁寧にプレイできるようにならなあかんなと思っていました」
昨年は関西Div.1の中でもトップクラスのQBレーティングを誇ったものの、要所でのターンオーバーが重なり、満足出来るようなパフォーマンスではなかった。
今季はオフェンスコーディネーターが昨年から変わり、ゼロからのスタートとなった。昨年はリーグの中でも屈指のOLユニットとRBが揃っており、ランプレーを軸に組み立てながらプレーアクションパスを使い要所でロングパスを狙う流れを得意としていたが、今シーズンは勝負所だけでやく、ショートパスやミドルパスで確実にボールを進め、オフェンスのリズムを作る機会が増えた。春シーズンは他チームより試合数が多かったからこそ、オフェンスのプレーを精度高く実行することにこだわってきたという。
「オフシーズンに向き合ってやってきたことがちゃんと結果に繋がってる。そこが自信に繋がっていて、自分の引き出しが増えて、引き出しが増えれば増えるほどプレーで出る余裕は違います。『これが無理だったらこうすれば良い』というのが頭の中ですぐに出てくるようになったのが今年の春でした。」
春シーズンを経て格段にプレー中に余裕を持てている実感は大きく、昨シーズンよりも確実に成長してきているという。またプレーだけでなく、オフェンスを牽引するリーダーとしての意識も大きく変わった。昨年と比較して、オフェンスの前でもチームの全体の前でも話すことが増えた。
「やっぱりプレーで示すことは出来ますけど、出来る範囲は決まっていると思ってて。プレーで伝えきれへんことは言葉で伝えないといけないと思ってます。今年は4回生も優しいので、だからこそ言いづらいことだったり、チームに思ってることと、やらなあかんやろってことは今まで以上に伝えていますね」
「QBってポジションだからこそ、須田がおるから大丈夫やろ、須田さんがおるから安心するわって思ってもらえるような選手にならないといけないと思っています。そういう存在になれたらもっとみんな楽にプレー出来るのかなって思いますし、みんなの良いところを引き出して、自分の負担も減らせるんじゃないかなと思います」
「自分のために、4回生のために、チームのために自分が持っている影響力は全部使おうと思っています。今は日本一しか考えていないです。」
関大のエースのラストイヤーはどんな結果が待っているのか。今後も注目したい。